コンピュータが可能にする表現 Computer Graphics

5. セルアニメーションとCG

実写映画では、SFX(特撮)、VFX(ビジュアル・エフェクツ, 視覚効果)をさらに表現力豊かにするという意味では、CG技術は当時の特殊撮影の限界を感じていた現場では潜在的に必要とされているものであった。また、特殊撮影の現場は常に新しい技術や手法を取り入れていくという気風があったと思われる。

それに対して、アニメーションはもともと二次元の表現であり、セルアニメーションならではの表現力は当時としても完成されていたとも言える(停滞していたとも言えるが)。そのセルアニメーションの世界にコンピュータ技術や3DCGの手法を取り入れることは、旧体制との決別を意味するものでもあった。

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そして、1995年に上映された初のフルCGアニメーション映画である「トイ・ストーリー」は成功を収めたが、個人的には表現としては物足りないものがあり、まだまだセルアニメの方がいいのではないかと思われた。しかしながら、2011年の「塔の上のラプンツェル」などは、旧来のセルアニメでは実現できない効果的な映像表現を使って作品としての表現に昇華させていると感じた。3DCGアニメーションが単なる視覚的な効果を生み出すテクノロジーとしてでなく、アニメーション本来の作品表現を生み出すための表現手段として成熟してきていると感じる。

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また、CGを使う=3DCGのアニメーションというわけではなく、2Dのアニメーションに一部3DCG技術を取り入れたり、手書きのアニメーションにデジタル処理を施すなど、表現目的や効率、予算に応じてそれぞれのよさを活かした技術が利用されている。

 

参考文献
ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー(DVD) ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

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