4. ビデオカメラの基本操作

本演習では時間の関係から、撮影においてはビデオカメラのオート機能を用いる。しかしながら、基本的なビデオカメラの機能は理解しておく必要があるため、ここでは業務用DVCAMコーダーであるSONYのDSR-300を用いてビデオ撮影における基礎知識について解説する。

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DSR-300は1998年発売の一体型のDVCAMコーダー。当時の価格は133万円。もうかなり旧式になってしまったが、マニュアル撮影を理解するためには十分な機能を備えている。

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上図のように、業務用のビデオカメラのレンズにはフォーカス、ズーム、絞りが独立したリングがついており、慣れれば瞬時にピント、構造、明るさを調整することができる。

 

フォーカス(ピント)

focus(英語)、brandpunt(オランダ語、ピントの語源)でどちらとも「焦点」を意味する。ズームによって変化するレンズの焦点距離と絞りの関係によってピントの合う範囲である被写界深度が変化する。より望遠、より開放な絞りのほうが被写界深度が狭く、ピントの合う範囲がせまくなる。逆により広角、より暗い絞りのほうが被写界深度が深くなる。晴天の中で焦点距離の短い広角レンズを用い、絞りを絞ることで、近距離から遠距離までピントが合ったパンフォーカスと呼ばれる状態にすることができる。

 

絞り(アイリス)

機械的に複数の板を重ね合わせたもので、リングを回転させることで通過する光の量を調整することができる。暗くすることを絞りを「絞る」と呼び、逆に明るくすることを絞りを「開く」と呼ぶ。限界まで開いた状態を「開放」と呼ぶ。動物の目には、絞りと同じ機能を持つ虹彩(こうさい)がある。

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画像は絞り(Wikiより)

 

ズーム

写真と異なり、動的な焦点距離の変化も多様する映像表現の一つであるため、ビデオカメラには通常ズームレンズが取り付けられ、自動でズームを調整することができるズームレバーも装備されている。このズームがあるため、ビデオからカメラを学んだ人と写真からカメラを学んだ人は画作りに対する姿勢が大きく異なる。

 

ホワイトバランス

映像の色合いを設定するための基準となるもの。ホワイトバランスは色温度の値をもとに変化する。色温度は低いほどオレンジがかり、高いほど青くなる。白熱電球では色温度がおよそ3200K、晴天の太陽光線は5500Kであり、晴天より曇りのほうが色温度が高くなる。フィルムやテープの時代には、この色温度を逆手にとり、ホワイトバランスを狂わせることで奇抜な色合いの映像表現を行っていたこともあるが、現在ではデジタル処理の後加工でどうにでも色を変えることができるようになったため、撮影時には忠実な色で撮影したほうが無難である。

 

NDフィルタ

通常の絞りの範囲では明るすぎて撮影できない晴天の屋外などでは、カメラに内蔵されているNDフィルタを利用する。NDフィルタとは、色に影響せず減光(Neutral Density)できるフィルター。ポートレート撮影など、あえて絞りを開放にして被写体の背景をボカす場合などにも利用する場合があるが、強引なやり方とも言える。

 

ゲイン

ゲインは電子的に映像の明るさを上げる機能。ゲインを上げれば上げるほどノイズが大きくなるので、どうしても照明を使えない暗闇での撮影以外はゲインは小さいほうが望ましい。

 

シャッタースピード

シャッタースピードは通常の撮影では変更することは少ない。映像は写真と異なり1秒間のコマ数であるフレームレート(単位:fps)が規格として決められている。通常のTVであれば30fpsや60fpsであり、動画として自然が動きのためには1/60秒より早いシャッタースピードで撮影する。描画速度の遅い昔のTVやPCのモニターを撮影する時や蛍光灯のちらつきに対応するためにシャッタースピードを変更することもある。近年のビデオカメラで、映像効果としてあえてブレた動きのある映像を撮影するために1/30秒より遅いスローシャッターの機能を持つものもある。ビデオのシャッターは電子的に実現したものであり、写真のような機械的なシャータースピードとは異なる。

 

本演習で用いるCanon XF100は、家庭用のビデオカメラに比べればマニュアル撮影を行いやすいが、限られた時間の中で画作りを行うためにはフォーカス、絞り、ズームが異なるリングで調整できるカメラのほうが作業効率が格段に高い。とは言え、業務用カメラを準備することができるのはプロの現場に限られる。現在のビデオカメラのオート機能は精度が高く、下手にマニュアル撮影するよりも安定した撮影を行うことができる。また、カメラの機能を熟知すれば小型のビデオカメラであっても高度な画作りを行うことは可能である。

 

<おまけ情報>

2014年5月に発表(6月発売)されたSONYのα7Sは、ISO409600というとんでもない感度を持っている。デジタル以前のカメラでは蛍や花火を鮮明に撮影することは不可能で、暗い場所の撮影にはブルーの照明をあてたり昼間にフィルターを使って撮影、花火は合成するなど、実は嘘をついてそれらしく見せる工夫をしていた。だが、このような超高感度撮影が可能になれば、ニュース報道やドキュメンタリーなどで「明るくする」という目的ではライトは必要なくなるだろうなー。さらにα7Sは4Kも可能だ!超高感度技術は、シャッタースピードが速くなることで映像が暗くなるスーパースロー撮影にも威力を発揮するだろうな。

参考URL:動画:ソニー α7S、ISO 409600で暗所撮影の威力がわかる比較動画